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誰が為のメッセージとサウンド


2004年2月、デビュー20周年記念にリリースされたシングル「NETWORK」はトランスサウンドによる小室哲哉作詞作曲の新曲「SCREEN OF LIFE」、デビュー曲をトランスサウンドでリメイクされた「TAKE IT TO THE LUCKY (金曜日のライオン) 」、そして80年代サウンドを彷彿させる木根尚登作曲のバラード「風のない十字路」の3曲が収録された。
ここでTM NETWORKは「次のTMサウンドはトランス」ということをCDという形で表明することになります。

これまでTM NETWORKは、サウンドを大きく転換させたことが何度かあります。
一番大きかったのは、TM NETWORKからTMNにリニューアルの際、それまでのダンスサウンドから、ハードロックサウンド(裏テーマとしてハウスサウンド)へ切り替わった時。

そのアルバム「RHYTHM RED」の先行シングル「THE POINT OF LOVERS' NIGHT」「TIME TO COUNT DOWN」は、強いメッセージのラブソングでした。

一方「SCREEN OF LIFE」は、小室自身の人生観を織り込みつつ、「現状でいいんですか?」とリスナーに問いかける、メッセージソングでした。
しかし、この曲は今までのメッセージソングと比して、欠ける点がありました。

それは「自分達はこうしたい、こうありたい」という「決意」です。

TM NETWORKの代表曲である、「Self Control」・「Get Wild」・「Seven Days War」は、歌詞の中で「自分の決意」が鮮明なメッセージを放っていました。
しかし、トランスという先鋭的なサウンドに託された歌詞は、「歌い手の決意」が不透明な歌詞でした。
トランスサウンドに載せられたのは、説得力に欠ける歌詞。
このギャップが、「TM NETWORKはトランスサウンドで行く」というメッセージを弱める働きをしたと思われます。

更に、このメッセージソングの放つ先が問題でした。
TM NETWORKは「SCREEN OF LIFE」を「団塊の世代へのメッセージソング」と位置付けています。
しかし、団塊の世代へのアプローチとして、トランスサウンドが適当だったか、僕はこの事がはなはだ疑問です。

既に2000年に、団塊の世代のメッセージ・ソングが2枚、リリースされていました。

小田和正「個人主義」


中島みゆき「地上の星/ヘッドライト・テールライト」

小田和正は「個人主義」を「団塊の世代のメッセージ」として位置付け、収録曲「風のように」で「自分はひとりになっても誇りある道を歩いてゆく」と「宣言」します。
一方、中島みゆきは徹底的な第三者的視点で、団塊の世代がたどった歴史を情景化し、力強いボーカルで歌い上げます。

いずれも真の部分で強い、それゆえに説得力のある歌です。
そして二人とも、これ以降ミュージックシーンに少なからずインパクトを与え続けます。
ターゲットであった団塊の世代とその次の層のみならず、若者層まで幅広い層へリスナーを広げていきました。
いずれもサウンド的には彼らのこれまでの作品の延長上でしかないのですが、説得力ある曲だからこそ、その力強さで世の中に広まっていった、と言えます。

更に2003年、あるメッセージソングが世に出ます。
Mr.Children「タガタメ」(アルバム「シフクノオト」収録)


リリース前にラジオで先行して流されたこの曲は、この世を憂いつつ、「自分に今出来ることは愛することしかない」と言い切っています。

残念ながら「SCREEN OF LIFE」は、これらの曲にある「メッセージの強さ=説得力」に欠けました。
その上、団塊の世代のほとんどが初体験と言えるトランスサウンド。
団塊の世代に届きにくく、届いたとしても取っつきにくいものになってしまいました。
一方で、曲自身に強さがないことから、若者をはじめ他の世代へのアピールも難しい状況になりました。
そのために「SCREEN OF LIFE」は、世に広まることがなかったのです。

そして説得力に欠けるが故に、「次のサウンドはトランス」というTMの姿勢に納得しないリスナーを、結果的に多く生むことになります。

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