「クリスマスの約束 2016」は「回帰」と「継続」が混在した作品だったと思う。

番組冒頭は、最初の「クリスマスの約束〜きっと君は来ない〜」(2001年)への回帰であった。
「クリスマスの約束〜きっと君は来ない〜」で取り上げ、2005年には中居正広を迎えて演奏した「夜空ノムコウ」を最初に歌ったのは、おそらくSMAP解散への小田和正なりのはなむけであったのであろう。

そして、同じく「クリスマスの約束〜きっと君は来ない〜」では果たせなかった宇多田ヒカルとの15年越しの共演へと続いたことで、「夜空ノムコウ」からの良い流れを作っていた。
周知の通り、宇多田ヒカルは今年の紅白歌合戦に出場する。
それは結婚・出産を経ての心境の変化、と推測されているが、「クリスマスの約束」への出演にも、そういった影響があったのかもしれない。
(もっとも、初回の時に父・宇多田照實氏が小田さんへの手紙に記したとおり、当時は別の事情があっただけなのかもしれないが。)
小田さんと宇多田さんとの会話からは、この共演に至るまでに二人が信頼関係を深めていったことが伺える。
そして共演した3曲のうち、「Automatic」「花束は君に」はアコースティックアレンジ、「たしかなこと」はロック寄りのニューアレンジというのも興味深い。

昨年に引き続き、和田唱(TRICERATOPS)が登場してからは、今や事実上のレギュラーメンバー(根本要(STARDUST REVUE)・松たか子・スキマスイッチ・水野良樹(いきものがかり)・JUJU)による演奏へ。
ここからは「新旧問わずいい曲を紹介していく」という初回からのコンセプトを、2009年の大メドレー以降色濃くなった「アーチスト同士との共演」という形で引き継いだ近年の「クリスマスの約束」を継続していく、という意思を感じる。
今回、和田さんはポール・マッカートニー・メドレーだけでなく、松さんやJUJUさんがメインボーカルにとる曲や、最後の「きよしこの夜」にも参加していることから、来年以降も小田さん達と共演してくれる予感にとらわれる。
また、番組を飛び出す形で昨年フェス3公演に出演した委員会バンド(小田和正・根本要・大橋卓弥・常田真太郎・水野良樹)が、その時に書き下ろした新曲「約束」を歌ったのは、このバンドが来年以降再び活動する意思があることを示していると思われる。

そして2015年に引き続き、小田和正の新曲に拠らない演出となったことにも注目したい。
かつてツアーがあった年の「クリスマスの約束」は、ツアーと連動してリリースされたアルバムの収録曲が演奏されていた。
それが「本日、小田日和」のツアーが終わった2015年の「クリスマスの約束」では、小田和正の新作(この時はアルバム「小田日和」)からの選曲が行われなかった。
今年は新曲入りのベストアルバム「あの日 あの時」のリリースがあったが、そこからチョイスされたのは宇多田ヒカルのリクエストによる「たしかなこと」だけ。
但し、今年開かれた「君住む街へ」ツアーの途中から歌われるようになった「NEXTのテーマ〜僕等がいた〜」が演奏されており、その意味では2015年の「クリスマスの約束」よりは小田和正の活動にリンクしていたといえる。
いずれにしろ、選曲では「脱・小田和正」が進んでおり、それは「クリスマスの約束」を他のレギュラーメンバーに託す、小田さんが言うところの「バトンを渡す」準備だと思われる。

ちなみに「NEXTのテーマ〜僕等がいた〜」という選曲は、昨年歌った「きっと同じ」と同じ、小田和正がオフコースを解散するかどうかの迷いの中にあった1982年の作品である。
元々、小田和正は「さよならは 言わない」(2008年発表 2009年発売)に絡めたコメントで、明確に自身の活動にファイナルという区切りをつける気がないことを示している。
「NEXTのテーマ〜僕等がいた〜」も「きっと同じ」も、「終わる」ことをテーマにしつつも、「再開(再会)」に含みを持たせている曲である。
「クリスマスの約束」は今年で終わるかもしれない、あるいは小田自身が身を引くかもしれない、でもまだ続くかもしれない…、小田の心境が現れた2曲のような気がしている。


関連記事:

「クリスマスの約束 2016」(小田和正・宇多田ヒカル・スキマスイッチほか出演)演奏曲

History of 「クリスマスの約束」
(2004年までのエピソード集)

「クリスマスの約束 2015」感想

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1998-02-25