2000年、小田和正は6年半ぶりにオリジナルアルバムをリリースする。
タイトルは「個人主義」、「小田和正=ラブソング」というパブリックイメージを覆すように、メッセージソングが随所に織り込まれた作品となった。

その代表曲といえる「the flag」は、学生運動とその終わりを語りつつ、人々、特に同世代にポジティブに呼びかけている。

こゝから 行くべき その道は どこかと
できるなら もう一度 捜さないか
戦える 僕らの武器は 今 何かと
それを見つけて こゝへ 並ばないか

僕は 諦めない 誰か 聞いて いるか
僕は こゝにいる 誰か そばに いるか
(「the flag」)

「個人主義」のジャケットは小田の絵が描かれた旗であり、それ故にタイトルチューンのない「個人主義」において、「the flag」はアルバムの核として見られるようになる。

一方、同じ「個人主義」に収録されている「はるかな夢」は、「the flag」とは対照的な曲である。

決して届かぬ 夢を見たのか
そんなに 人は 哀しいものか
疑いもせず ひとつに なれることは ないのか
誰かの挙げた その手に 重ねる手は ないか

(中略)

それを 夢と いつまでもこうして みんなが 呼び続けているなら
やがて こゝには いつの日か誰も いなくなるだろう
(「はるかな夢」)

「the flag」とは真逆の、オフコース初期の「地球は狭くなりました」や「ひとりで生きてゆければ」を想起させる、ネガティブ・ペシミズムが前面に出た曲である。
かつて小田は、その前のオリジナルアルバム「MY HOME TOWN」(1993年)が思ったほど売れなかったことに悲観し、「自分のオリジナルアルバムを、もう世間は求めていないんじゃないか」という気持ちに陥ったことがあった。その時の気持ちも幾分反映しているような感じもする。

同じアルバムに対照的な2曲が入っていたのは、当時の小田の揺れ動く気持ちが込められていたのかもしれない。

リリース後、世間に注目されたのは、ポジティブな「the flag」であった。
また「言葉にできない」「キラキラ」「たしかなこと」とヒットを紡ぎ、テレビ特番「クリスマスの約束」が注目された小田和正の軌跡と、「the flag」は重なるところがあった。

「the flag」はライブでも演奏される機会が多い準定番曲となり、「自己ベスト・2」(2007年)や「あの日 あの時」(2016年)といったベストアルバムにも収録されている。
一方、「はるかな夢」は2000年のツアー「same moon!」で演奏されたことにとどまる。


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the flag
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個人主義
小田和正
ファンハウス
2000-04-19