TM NETWORK はシンセサイザーサウンドとロック・ダンスサウンドの融合、というイメージが世間では強い。しかしながら、小室哲哉のクラシック、宇都宮隆の歌謡曲、木根尚登のフォークなど、様々な音楽をバックボーンに持つ。
そして3人の共通項として、プログレッシブ・ロックも存在する。

プログレッシブ・ロックは、実験的・革新的なロックを意味し、ロックにクラシック、ジャズ、フォーク、地域音楽から最新のシンセサイザーサウンドまでを融合させた、アルバム指向のロックである。
多様な音楽のバックボーンを持つ TM NETWORK がプログレッシブ・ロックに向かうのは、ある意味で当然の結果かも知れない。
1984年のデビューから1年半後にリリースしたミニアルバム「TWINKLE NIGHT」の収録曲「組曲 VAMPIRE HUNTER D」は、小室哲哉が手がけた「吸血鬼ハンター“D”オリジナル・アニメーション・サウンド・トラック」の曲達を組曲として再構成されたものであるが、彼らがこの頃からプログレッシブ・ロックへ指向していたことを示す1曲ともいえる。

1988年、TM NETWORK は初のプログレッシブ・ロックを基調とするアルバム「CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜」をリリースする。
2枚組となったアナログ盤(LP)には、1枚目に「組曲 CAROL」と呼ばれる曲達を、2枚目にシングル曲「Beyond The Time」「Seven Days War」などの曲を収録している。一方、CD等では「組曲 CAROL」と他の曲が混在して収録されている。
「A Day In The Girl's Life (永遠の一瞬)」「Carol (Carol's Theme I)」「Chase In Labyrinth (闇のラビリンス)」「Gia Co「組曲 CAROL」はrm Fillippo Dia (Devil's Carnival)」「In The Forest (君の声が聞こえる)」「Carol (Carol's Theme II)」「Just One Victory (たったひとつの勝利)」で構成される「組曲 CAROL」は、「1991年、音が何者かに盗まれている事に気づきはじめていた、イギリスに住む少女キャロル・ミュー・ダグラスが、異世界ラ・パス・ル・パスへ迷い込み、ティコ・ブラーニ、フラッシュ、クラーク・マクスウェルと共に盗まれた音を取り戻すため魔王ジャイガンティカを倒すために戦う」というファンタジックな物語をもとに作られた。この物語は木根尚登によって「CAROL」として小説化され、後にアニメ化及びラジオドラマ化されている。「組曲 CAROL」は、TM NETWORK がデビュー当時から持つファンタジー性の集大成的作品だともいえる。
このアルバムに連動したツアー「TM NETWORK TOUR '88〜'89 CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜」ではライブ中盤(第2部)で、ツアーファイナルの位置づけとなる「TM NETWORK CAROL TOUR FINAL CAMP FANKS!! '89」ではライブ前半(第1部)に、「組曲 CAROL」はアルバム未収録曲「Gigantica」「Final Fighting」を交えて、ミュージカル仕立ての舞台で演奏された。
その演奏は1992年のライブセレクションアルバム「TMN COLOSSEUM I」に「組曲 CAROL」まるごと収録された。そして「TM NETWORK CAROL TOUR FINAL CAMP FANKS!! '89」のライブ映像は2004年に「CAROL the LIVE」としてリリースされた。
また1994年の TMN 終了ライブ「TMN 4001 DAYS GROOVE」2日目では、「組曲 CAROL」の一部が演奏されている。これは「CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜」が TM NETWORK ・ TMN の作品の中で一番売れたアルバムであることなどから、選曲されたとみられる。この演奏は映像作品「TMN final live LAST GROOVE 5.19」に収録されている。

TM NETWORK 2作目のプログレッシブ・ロックは2000年、1999年の再始動後初のアルバム「Major Turn-Round」である。
この作品では、タイトルチューン「MAJOR TURN-ROUND」が演奏時間33分にも及ぶ曲となっている。このタイトルチューンは、歌が入る「FIRST IMPRESSION」、インストの「SECOND IMPRESSION」、再び歌が入る「THIRD IMPRESSION」の三部構成となっている。
このアルバムはプログレッシブ・ロックと共に、「時代の閉塞感・虚無感」がテーマとなっている。タイトルチューンをはじめ、収録曲のほとんどが閉塞感・虚無感を色濃く映し出した歌詞とサウンドとなっている。
アルバム「Major Turn-Round」は当時インディーズレーベル・ ROJAM.COM からリリースされたが、吉本系レーベル・ R&C Japan 所属後の2003年、蔵出し音源集との2枚組アルバム「キヲクトキロク 〜 Major Turn-Round」としてリリースされている。ちなみに、この蔵出し音源集「キヲクトキロク」には、「CAROL」のピアノソロバージョン「CAROL (Unreleased Piano Version)」が収録されている。

TM NETWORK 3作目のプログレッシブ・ロックは2014年、アルバム「QUIT 30」である。
テーマは「ソーシャル・ネットワーキング・サービスでの拡散による恩恵と危惧」であることから、「Major Turn-Round」の流れを汲むところがある。
タイトルチューン「QUIT 30」は収録に際し8トラックに分けられ、アルバムの前半に「[QUIT30] Birth」「[QUIT30] The Beginning Of The End」「[QUIT30] Mist」が、後半に「[QUIT30] Glow」「[QUIT30] Loop Of The Life」「[QUIT30] Entrance Of The Earth」「[QUIT30] The Beginning Of The End II」「[QUIT30] The Beginning Of The End III」が収録されている。
アルバム「QUIT 30」はCD 1枚のみ、CD 2枚組、CD 2枚組とDVDの3形態で発売されているが、2枚組CDの2枚目には、セルフカバー「[CAROL 2014] A Day In The Girl’s Life」「[CAROL 2014] Carol (Carol’s theme I)」「[CAROL 2014] In The Forest」「[CAROL 2014] Carol (Carol’s theme II)」が収録されている。
アルバムと連動したホールツアー「TM NETWORK 30th 1984〜 QUIT 30」では「QUIT 30」が全曲演奏された。一方、その後のアリーナライブ「TM NETWORK 30th 1984〜 QUIT30 HUGE DATA」「TM NETWORK 30th FINAL」では、「組曲 CAROL」をメインとしたセットリストとなった。

これらの曲は今年(2020年)にリリースされた、ファン投票に基づくベストアルバム「Gift from Fanks T」「Gift from Fanks M」にはほとんど収録されていない。
だが、TM NETWORK の重要な要素であるプログレッシブ・ロック、そこに込められたメッセージを味わうためにも、ベストアルバムでなく、これら3枚のオリジナルアルバムを聞くことをおすすめしたい。


関連記事(いずれもアルバム紹介記事)

TM NETWORK 「CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜」

TMN「COLOSSEUM I・II」

TM NETWORK 「Major Turn-Round」

TM NETWORK アルバム「QUIT 30」



CAROL DELUXE EDITION(完全生産限定盤)(DVD付)
TM NETWORK
ソニー・ミュージックダイレクト
2014-12-24


Major Turn-Round
TMN
ROJAM
2001-06-15


キヲクトキロク~Major Turn-Round
TM NETWORK
R and C Ltd.
2003-02-05


QUIT30 (2枚組CD+DVD)
TM NETWORK
avex trax
2014-10-29