このふたつのツアーは、2020年半ばまで小室哲哉が引退状態にある中、あらかじめ予定されていた宇都宮隆・木根尚登なりの TM NETWORK デビュー35周年記念コンサートだったように思う。
その根拠は、「Dragon The Carnival」追加公演最終日で、ステージ上のスクリーンに掲示された「たのしんでくれたかな? ぼくなりの35周年 いったん閉園しま〜す ありがとうございました!」が示している。「いったん」という言葉に、「SPIN OFF T-Mue-needs」を暗に予告していたのだろう。
「Dragon The Carnival」「SPIN OFF T-Mue-needs」いずれも、TM NETWORK ナンバーが主体のコンサートであるが、その内容は大きく異なる。
「Dragon The Carnival」は宇都宮隆のソロコンサートであり、「Takashi Utsunomiya Tour 2018 Thanatos -25th Anniversary Final-」での土橋安騎夫・浅倉大介・ nishi-ken によるトリプルキーボードとギターで彩られたEDMサウンドで、TM NETWORK ナンバーを演奏したら、という要素が濃い。但し、TM NETWORK は2012年から2015年の活動でEDMに傾倒しているが、その TM NETWORK EDM とは一線を画す、土橋安騎夫・浅倉大介・ nishi-ken がそれぞれ解釈したEDMが渾然一体となったアレンジである。一方、「Dragon The Carnival」は TM NETWORK のサポート歴のある北島健二がギターを担当しており、彼のギタープレイが TM NETWORK の薫りを漂わせていた。
映像やパントマイマーによる演出もあって、それが TM NETWORK 初期のファンタジックなステージを想起させる面もある。
セットリストも「Come on Let’s Dance」「Rhythm Red Beat Black」「Be Together」といったダンスナンバー、「Dragon the Festival」「Here, There & Everywhere(冬の神話)」「クロコダイルラップ(Get Away)」「Fantastic Vision」といった、ファンタジー性の強いナンバーが目立つ。
一方、「SPIN OFF T-Mue-needs」は「TM NETWORK tribute LIVE 2003」「SPIN OFF from TM -tribute LIVE 2005-」「SPIN OFF from TM 2007-tribute LIVE III-」の流れを汲む、13年ぶりのコンサートである。
参加アーティストも、宇宮隆・木根尚登・葛城哲哉(G)・阿部薫(Dr)・浅倉大介(Key)という、TMN 時代の演奏メンバーから小室哲哉が抜けた形である。なお、仙台公演は浅倉大介に代わり、SOPHIA の都啓一がキーボードを担当。中野サンプラザでの追加公演はその都啓一も参加し、浅倉大介とのダブルキーボード体制となった。そしてこのライブ初参加の都啓一は、 TM NETWORK を公言していることもあり、「SPIN OFF」シリーズの流れを汲む違和感のない演奏をみせていた上、中野サンプラザでは浅倉大介との息の合ったコンビネーションを聴かせてくれた。
その参加メンバーに加え、「Tour TMN EXPO」(1991〜1992)のコーナーであった、フォークソングやメタルロックをカバーするフォークパビリオン・メタルパビリオンの再現、そして「RHYTHM RED TMN TOUR」(1990〜1991)を想起させる旗を用いた演出など、 TMN 時代を彷彿とさせるコンサートとなった。
セットリストも、「69/99」「STILL LOVE HER (失われた風景)」「PALE SHELTER」「Children of the New Century」「ALIVE」「THE POINT OF LOVERS' NIGHT」といったロック色の強いナンバーが要所を締める。また TMN 時代の木根尚登メインボーカル曲「LOOKING AT YOU」「月はピアノに誘われて」が日替わりで歌われているところも、 TMN 時代を想起させるコンサートとなった。
アレンジも、中野サンプラザ追加公演飲みで演奏された「Get Wild」以外は、過去の「SPIN OFF」シリーズ同様、原曲を彷彿とさせるアレンジとなっている。
フォークパビリオンでは宇宮隆・木根尚登のトークが展開されるが、その時間が長いこと以外は「Tour TMN EXPO」当時のままである。
このように、「Dragon The Carnival」「SPIN OFF T-Mue-needs」はコンサートのコンセプトも違う。更に選曲は、「Get Wild」が「Dragon The Carnival」の日替わり演奏、「SPIN OFF T-Mue-needs」中野サンプラザ追加公演で重複する以外は、両ツアーで同じ曲は演奏されていない。
「Dragon The Carnival」ではセットリストの候補となりながら演奏されなかった「CASTLE IN THE CLOUDS」「ALIVE」などが、「SPIN OFF T-Mue-needs」で演奏されたことをみると、「Dragon The Carnival」の選曲が、「SPIN OFF T-Mue-needs」を見据えてのものであったように思う。
一方、「Dragon The Carnival」「SPIN OFF T-Mue-needs」の共通点は、最後を飾る追加公演が中野サンプラザであったことである。
中野サンプラザは1983年に TM NETWORK がグランプリを取った「フレッシュサウンズコンテスト」の会場である。しかも1991年「Tour TMN EXPO」以降、中野サンプラザで TM NETWORK のコンサートは開かれていない。「Dragon The Carnival」「SPIN OFF T-Mue-needs」も、宇宮隆・木根尚登にとって、凱旋あるいは里帰りコンサートの側面もあったように思う。
一方で代表曲のうち「Self Control (方舟に曳かれて)」が「Dragon The Carnival」追加公演最終日に1回だけ演奏されただけ、「RESISTANCE」「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)」は両ツアーで演奏されなかったのが心残りである。
TM NETWORK の三人が揃ってこその「1974 (16光年の訪問者)」「ELECTRIC PROPHET (電気じかけの予言者)」「Nights of The Knife」が演奏されないのは納得であるが…。
それは次の展開に期待するとしよう。
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※【】は日替わり演奏曲
Takashi Utsunomiya Tour 2019 Dragon The Carnival FINAL (2020.2.7)
Bang The Gong
Secret Rhythm
Welcome Back 2
Come on Let’s Dance
〜Come on Everybody
Dragon the Festival
Virgin Emotion <浅倉大介ソロ with 北島健二>
Here, There & Everywhere(冬の神話)
Rhythm Red Beat Black
キセキ(nishi-ken ソロ)
クロコダイルラップ(Get Away)
Fantastic Vision
・「これなんでしょう」のコーナー
We are starting over
【夏の終わり(追加公演初日のみ)】
Be Together
フレンズ <土橋安騎夫ソロ>
Just One Victory(たったひとつの勝利)
Wild Heaven 【or 「金曜日のライオン」】
SARA <北島健二 with nishi-ken (Vo)>
Get Wild【or 「LOVE TRAIN」】
I am
・ENCORE
Human System【or 「SEVEN DAY WAR」】
SELF CONTROL (方舟に曳かれて)
SE. VAMPIRE HUNTER D
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tribute live SPIN OFF T-Mue-needs FINAL (2020.12.2)
EXPO
69/99
SCREEN OF LIFE
STILL LOVE HER (失われた風景)
パノラマジック 【or 「RAINBOW RAINBOW」】
PALE SHELTER
月はピアノに誘われて【or 「LOOKING AT YOU」】
(Interval from CLASSIX1)
<フォークパビリオン(宇都宮隆・木根尚登)>
馬(吉田拓郎/Vo.木根)
マークII(吉田拓郎/Vo.木根)
走れコータロー(ソルティー・シュガー/Vo.宇都宮) with 阿部薫
せんこう花火(吉田拓郎/Vo.宇都宮)
月の河
<メタルパビリオン(Vo.阿部薫、Dr.阿部薫→木根尚登、B.宇都宮隆、G.浅倉大介・葛城哲哉)>
I Hate Folk
Kick start my heart (Motley Crue)
Rock And Roll All Nite (KISS)
Come Closer (浅倉大介・都啓一)
(nuworld)
Children of the New Century
あの夏を忘れない
Gia Corm Fillippo Dia (Devil's Carnival) (Inst)
CASTLE IN THE CLOUDS
ALIVE
THE POINT OF LOVERS' NIGHT
・Encore
Get Wild (ゲスト: nishi-ken、Shinnosuke)
【Another Encore Song :「You Can Dance」「Nervous」「We Love the Earth」】
SE.Interval from CLASSIX2 〜 Get Wild
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「TAKASHI UTSUNOMIYA CONCERT TOUR 2009 SMALL NETWORK F.O.D」「TAKASHI UTSUNOMIYA Tour 2019 Dragon The Carnival」〜Side Story of TM NETWORK〜
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